屋根雪処理法の選定 :キーワードと選定条件
基礎編ではそれぞれの屋根雪処理方式の特徴を述べました。次に、これらの方式のキーワードと選定条件について述べます。
キーワード:
最大積雪深
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立地条件
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屋根形状
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家族構成
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宅地面積
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建ぺい率
選定条件:
耐雪荷重
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堆雪領域
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運転経費
キーワード
最大積雪深
新庄市の最大積雪深の記録は2.5mですが、山間部では3mを超えるところも珍しくありません。耐雪方式の場合にはどれだけの荷重まで耐えられるか、また融雪方式の場合はどれだけの処理能力をもたせるかが重要になり、これによってコストなどに大きくかかわってきます。また、自然滑落方式の場合も確保すべき堆雪領域を知る上で重要です。
立地条件
屋根雪処理は住宅の立地条件によって変わります。近くに川がある場合はそこが雪捨て場になることもあります。流雪溝が整備されていれば、ある程度それを使って屋根雪を処理することができます。温泉の排水を利用できる場合はそこで融雪できます。近くに人通りの多い道路がある場合は、そこに落雪するようなことがあってはなりません。
屋根形状
屋根形状はその家の景観を左右する大切な要素です。屋根雪処理にとって屋根の形はできるだけ単純な方がよいのです。凝った形にすると、屋根雪荷重に不均一(偏荷重)が生じたり、自然滑落方式では、屋根雪が滑落しにくくなったりするからです。そうはいっても、何らかの特徴を持たせたいとなると、屋根の形は凝ったものになります。この場合でもできるだけシンプルにすることを心がけるべきでしょう。
家族構成
当地では2世代が同居することは珍しくありません。それだけ多くの居住空間を必要とします。車の保有台数も多くなり、高床式住宅にして1階に車庫と物置を確保することが多いようです。このとき、老後のことを考えに入れて、玄関の構造がすっきりしているか、急な階段になっていないかなどに気を配る必要があります。
宅地面積
屋根雪処理にとっては敷地は広い方が望ましいのですが、地価が下がった今でも高価ですから、そうもいきません。市街地の密集したところでは、十分な広さの敷地を確保することが困難な場合もあります。十分な土地が確保できない場合は、耐雪方式や融雪方式、場合によっては雪下ろし方式を採用することになります。80坪以下の古い住宅では雪下ろし方式が多いようですが(沼野、1991)、本来ならこのようなところほど耐雪方式や融雪方式にした方が良いのです。
建ぺい率
面積が狭い土地に、許容される最大の建ぺい率で住宅を建てれば、当然屋根雪の堆積領域が確保できなくなります。その結果、上と同様に耐雪方式や融雪方式、場合によっては雪下ろし方式を採用せざるを得なくなります。建ぺい率は、各市町村の都市計画で決められています。
選定条件
耐雪荷重
建物がどれだけの屋根雪荷重に耐えうるかを表すものです。普通は300㎏/㎡程度ですが、それからどれだけ大きくできるかは、設計事務所や工務店の力量によるところが大きいので、豪雪地では特に吟味する必要があります。
堆雪領域
自然滑落方式では、軒下にどれだけの屋根雪をためておけるかで、採用の可否が決まります。この場合、屋根の形を切妻にするか片流れにするかによって、建物の配置が変わってきます。堆雪箇所を1箇所に集中させるには片流れが適しており、逆に分散させるには切妻が適しています。
運転経費
融雪方式では、電気や灯油を燃焼させたエネルギーで、屋根雪を融解します。雪1㎏を解かすには、80kcalという大きなエネルギーを投入しなければなりませんので、運転経費もばかになりません。