屋根雪荷重

(1) 最大積雪深の算定

まず最初に知らなければならないのは、住宅を建てる場所の最大積雪深です。最大積雪深は年ごとに変動し、多いときもあれば、少ないときもあります。少ない冬の積雪に合わせて住宅を設計したら、多くなったときに壊れてしまいます。ですから、一番多い積雪深に合わせて設計します。なお、屋根雪を融かす場合は、融雪装置が故障した場合を考えて、7日間連続降雪深の最大値を採用することが提唱されています(日本建築学会、1993)。

下図は新庄の最大積雪深の年変動です。
極大は1935/36年冬の250cm、極小は1953/54年冬の44cmと両者には5倍程度の開きがあります。近年の暖冬少雪傾向を反映した過去63年間の平均は135cmとなります。
グラフ 新庄の最大積雪深の年変動

(2) 最大積雪深の再現値

それでは、その場所の最大積雪深はどのように決めるのでしょうか。過去数十年にわたる積雪観測からその最大値を採用することもできますが、正確には統計的に処理した最大積雪深の再現値を使います。例えば50年再現値というのは50年に一度起こるくらいの大雪だということです。日本建築学会(1993)では、基本的には100年再現値を使用し、建築物の用途に応じて短くしたり長くしたりすることとしています。

下図は最大積雪深の再現期間です。
新庄市の最大積雪深の極大の250cmはほぼ120年に1回出現する可能性があることを示しています。
グラフ 最大積雪深の再現期間

(3) 屋根上最大積雪深の算定

上の(1)、(2)では地上の最大積雪深について考えましたが、それでは屋根の上には実際どれだけ積もるのでしょうか。風が強いと屋根上では雪が積もりにくくなります。そのため、吹きさらしの場所では積もる雪が少なくなりますが、大きな建物の風下などではかえって地上より多く積もる場所が出てきます。ですから、将来を含めた周囲の環境を考える必要があります。

下図は風力係数と風速との関係(ただし陸屋根の場合)です。
風力係数は地上の日降雪深に対する屋根上の日降雪深の比。これが1.0ということは、地上と同量の雪が屋根にも積もることを意味します。風速が大きくなるほど風力係数は小さくなり、5m/s以上ではほとんど積もらなくなることを表しています(阿部・中村,1984)。
グラフ 風力係数と風速との関係

(4) 屋根雪最大荷重の算定

次に屋根上での最大積雪荷重を求めます。それには、最大積雪深にそのときの平均密度をかけます。平均密度は冬の始まりから終わりまで次第に増加します。建築基準法施行令では平均密度として200kg/m3以上となっていますが、山形県の場合は、庄内地方の一部を除いて300kg/m3を使用することとしています。積雪深との関係では、1mのとき313kg/m3、2mのとき343kg/m3、3mのとき366kg/m3となり、最大積雪深の増加とともに大きく(重く)なります(城・桜井、1993)。

下図は積雪の平均密度の推移です。
積雪の平均密度は初冬から春先にかけてほぼ直線的に増加しています。最大積雪深が出現する2月上旬では約300kg/m3を示しています(阿部他,1989)。
グラフ 積雪の平均密度の推移

(5) 雪下ろしや急勾配による屋根上積雪深の軽減

建築基準法施行令86条では,雪下ろしをする場合は、上の屋根上最大積雪深を1mまで軽減することができるとしています。また、雪止めをつけないで勾配をきつくするとさらに軽減されます。しかし、各道県によって、運用の仕方が異なるようです(日本雪氷学会北信越支部屋根雪処理技術部会,1993)。直ちに雪下ろしができない場合もありますので、余裕をみる必要があります。この場合、平年値にしておけば、統計的には2年に1回は雪下ろしをしなくとも済みます。後で述べる耐雪方式の場合は上で述べた最大積雪深を採用しなければなりません。

急勾配による屋根雪荷重の軽減率

勾配、θ 30<θ≦40 40<θ≦50 50<θ≦60
軽減率 0.75 0.5 0.25